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放送と通信の融合

今日は文化の日なのでのんびりと文化的な生活を送ろうと思っていたのに、ある媒体の記者から電話が。楽天 vs. TBSで話題の「放送と通信の融合」について意見を聞かせてほしいとのこと。

こちらの都合を考えずにずけずけと厚かましいと思ったが、知らない人ではないので、専門外ですがと断ったうえで次のようなやり取りをした。

放送と通信という区別の古臭さ

記者
放送と通信の融合について、抱いているイメージを聞かせてほしい。

まず「放送と通信」という区別自体が古い。電波に乗せるか回線に乗せるかというハードの話ばかりで、肝心のコンテンツがなおざりだ。コンテンツがどのような経路で配信されようと、ユーザーにとっては届きさえすればよいからだ。

アメリカではTiVoというハードディスクレコーダーが流行している。地上波やケーブルテレビなどの番組情報(EPG)をもとに、好きな番組をハードディスクに録画しておくシステムだ。つまり、TiVoユーザーからすればコンテンツだけが問題なのであって、配信経路はどうでもよい。

記者
それはライフスタイルの多様化と関係しているのか。

もちろん関係している。ユーザーのライフスタイルは多種多様なのに、テレビ番組は時間弾力性がない。古くからビデオテープレコーダーが時間弾力性を補完してきたが、180分テープで3倍速で録画して9時間が容量の限度だった。しかし、ここ数年でハードディスクレコーダーが普及し、容量は飛躍的に増大している。デスクトップPCもテレビ/ビデオ機能つきが当たり前になった。「フロー」ではなく「ストック」の観点で考えるべきだ。

余談だが、テレビ局が躍起になっている視聴率というのはそもそもおかしな算出方法だ。統計的には信頼できる母数が確保されているかもしれないが、録画した場合はカウントされないという致命的な欠陥がある。ビデオリサーチ社といいながら、ビデオが対象に含まれていないのは皮肉だ。

放送のデジタル化

記者
地上デジタル放送が2006年までに全国で開始されるが、その影響は?

放送と通信を区別する意味がいっそうなくなる。フロー型視聴からストック型視聴への移行が一気に加速するのは間違いない。ホームサーバやマンションサーバに1週間分の番組を録画しておき、見たい番組を見たいときに視聴できるようになるはずだ。

先ほどの視聴率の話でいえば、デジタル化によってフローもストックも適切に把握できるようになるため、正確な値が算出できるようになるだろう。ただ、そのころには視聴率が今ほどの意味をもたないと思うが。

デジタル化によるインタラクティブ機能はWebコンテンツとして制作・提供されることになるだろう。映像をただ電波に乗せるのとは全く異なる配信プロセスになる。

記者
Webの果たす役割がますます大きくなるということか?

私は前々から「すべての道はWebに通ず」と言っている。WebはPodcastingというかたちですでにラジオを取り込みつつある。テレビも時間の問題だ。これは「べき論」ではなく、自然とそうなるということだ。

楽天のTBS買収戦略

記者
楽天のTBS買収戦略は正しいか?

明らかに間違っている。コンテナ(楽天)とコンテンツ(TBS)の垂直統合という考え方自体が古いからだ。プラットフォームになることを放棄しているのと同じだ。楽天が、あるいは先般のライブドアにも言えることだが、目指すべきはすべての局の番組を統合するプラットフォームである。これは大前研一さんやソフトバンクの孫正義さんがすでに指摘していることだ。

TBSを買収して、その先に何があるのか。せいぜい楽天でTBSの番組コンテンツを配信するぐらいしか使い道はないだろう。それがどの程度、楽天の収益に貢献するのか。

楽天の事業計画案には「テレビを見た人をWebに引き込むことで広告収入を得る」といった旨が書かれているようだが、試算は難しい。すでにどこの局もオンラインショップを開設し、テレビからWebへの引き込みを行っている。とにかく、コンテンツの囲い込みは、旧時代の、しかも失敗に終わる典型例のような戦略だ。

記者
TBSの拒否反応については?

経営陣が対決姿勢をあらわにすることで企業イメージがダウンしている。顔では笑っておいて、裏ではいろいろと防衛策を講じておくぐらいのしたたかさがあってよいはずだ。労組も同じく拒否反応を示しているが、リストラされたり給料が下がるのが嫌なだけだろう。

ライブドアのニッポン放送買収のときもそうだったが、上場している以上は誰に株を買われても文句は言えないはずなのに、ふたこと目には「放送の公共性」という大義名分を持ち出す。だったら上場するなという村上ファンドの意見は、市場のルールにもとづいた極めて当たり前の意見だ。

記者
ほかのテレビ局にもよい教訓となったか?

そもそもハードディスクレコーダーの普及によるCMスキップで、広告代理店を含めたテレビ放送の収益モデル自体が揺らいでいる。民放連は「CMCM」という無意味なCMを垂れ流して、テレビCM離れを食い止めようと躍起になっているが、もっとほかにやることがあるだろう。

各局も民放連も、デジタル化に備えてテレビのメディアとしてのプレゼンスをどう維持するか、収益モデルをどう再構築するか考えるべきだ。しかし、残念ながら「すべての道はWebに通ず」という流れのなかで、テレビ局のプレゼンスは縮小していくだろう。あるいは、大きな方向転換が迫られるはずだ。そのときに備えて今何をすべきかを考えるべきだろう。

日テレの「第2日本テレビ」開局

記者
日テレが「第2日本テレビ」を開局したが。

新たなチャレンジとして評価したいが、収益モデルが全くナンセンスだ。Webでは有料配信を収益源にするのは極めて難しい。テレビでは番組が無料で見られるのに、Webでは有料というのでは、そもそもユーザーは納得しないのではないか。

たとえばUSENのGyaOのように広告を収益源とした無料配信にすべきだ。Webで番組を配信する場合、アナログテレビではできないコンテンツと広告の同時表示が可能だ。番組内に出てくるグッズを広告として表示したり、それをきっかけにオンラインショップに引き込むなど、地上デジタル放送の構想を先取りしたってよいわけだ。

記者
iTMSは有料配信だが、それとの違いは?

iTMSはすでに存在するCD市場よりも曲単価が安く、iPodとの連携という付加価値がある。また、すでにプラットフォームとしての地位を築きつつあり、ビデオ配信やPodcastingのビデオ対応もはじまっている。

「第2日本テレビ」として自サイト内でコンテンツを配信せずに、よりオープンなiTMSから配信することを考えてもよいわけだ。そのほうがコストが少なくてすみ、収益が拡大するのではないか。

Posted on 2005-11-03T16:02+09:00 | Category: ITトレンド

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