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ブラウザトレンド雑感

ある媒体の記者にブラウザトレンドについていくつか聞かれたので、以下にそのやり取りを書く。

Mozilla Firefoxの躍進について

記者
ある調査ではMozilla Firefox(以下、Firefox)のシェアが5%に迫るなど躍進が目立つが?

好ましいと考えている。Firefoxは非常に優れたブラウザだが、私はFirefoxだけを応援しているわけではない。今のブラウザ市場は不健全だと考えるからだ。

たとえば我々が自動車を買うとしよう。自分の好みと事情に合わせて、トヨタ、ホンダ、日産、マツダなど国内メーカーだけでなく、ドイツ車、アメリカ車、フランス車など海外メーカーからも購入することができる。IEの独占状態で選択の自由がない今のブラウザ市場には強い違和感を覚えるということだ。

将来的には、IE 50%以下、Firefox 30%以上、Opera 10%以上、Safari 5%以上がひとまず理想とすべきマーケットシェアと言えるのではないか。

Netscapeの迷走について

記者
Netscapeは次期バージョンでダブルエンジンを搭載する予定(ダブルエンジン搭載ブラウザ参照)だが、このような開発方針については?

迷走しているとしか言いようがない。IE切り崩しのための苦肉の策だが、事実上の子供であるMozillaに存在感を奪われてしまっている現状、さらにIEの子分になろうとでも言うのか。

ブラウザの独自性の重要な要素としてレンダリングエンジンがある。レンダリングエンジンの開発には一定のコストと技術力が必要なため、今のNetscapeにその力がないと言えばそれまでだが、独自性の追求の仕方が無意味なほうに向かっていると感じる。

ライトユーザーにとってもパワーユーザーにとってもダブルエンジンのメリットは少ない。ライトユーザーはそもそもレンダリングエンジンの違いを意識しないし、パワーユーザーは実装のタイムラグを嫌うからだ。

インターフェースや拡張機能に独自性を打ち出すことはできても、レンダリングエンジンが借り物である以上、今後も広くユーザーを獲得するのは難しいと思う。

第3次ブラウザ戦争について

記者
Firefoxのシェア拡大により、再度ブラウザ戦争が起こるか?

起こると考えている。思えばNetscapeは非常に数奇な運命を辿ってきた。歴史を振り返れば、Mosaic-Netscapeラインは常にフロントランナーで、IEは常にフォロアー(追従者)だった。

1995~1997年の第1次ブラウザ戦争ではIEとNetscapeがメインキャストで、2001~2002年の第2次ブラウザ戦争ではさらにOperaとMozillaが参戦したが、いずれもIEが勝ち抜け圧倒的なシェアを誇ることになった。

今は、元々Netscapeのソースコードを開発していたMozillaが2003年にAOLから解放されて本領を発揮し、Firefoxという軽速ブラウザで市場を席巻している。Mac OSIEと決別してSafariを開発し、堅調にシェアを伸ばしている。

もちろんMicrosoftも躍起になって火消しにかかるだろう。IEは現在はあまり評判はよくないが、1997年に発表された4.0は当時としては先進的なブラウザだったし、今も豊富な資金力をもとに次期バージョンの開発を進めていると予想される。

ただ、現在のトレンドとして、ブラウザはWeb標準に収斂しつつあるため、IEはこれまでのような囲い込み型の展開を図るのは難しいのではないか。ブラウザはWeb標準に厳密に準拠して正しくレンダリングすることが求められている。このようなトレンドは、Webサイトやブログが広く浸透し、一般ユーザーの目が肥えてきたことが下地となっている。

本来Webはオープンなスペースであり、ユニバーサルにアクセスできる空間である。ユーザーの成熟とベネフィットの向上ためにも、またWeb技術のさらなる進展のためにも、ブラウザの選択肢は多いほうがよいのではないか。

Web 技術の標準化について

記者
IEのデファクトスタンダード化は、Webクリエイターにも恩恵をもたらしたのでは?

いや、違う。Webクリエイターは昔も今もクロスブラウザに腐心していることに変わりはない。確かにIEオンリー対応のサイトがここ数年で急増したが、それは個人レベルの話であって、Webクリエイターのマジョリティとマイノリティの見積もりはそう甘くはない。たとえばIEが90%のシェアであるとして、残りの10%のブラウザを無視することはないということだ。

技術の標準化と製品の標準化は違う。技術は中立的・普遍的、製品は個別的・偏向的である。多くの人に認められたジェネラリーアクセプテッドな団体が標準化を進めることで、技術の混乱を未然に防ぎ、あるいは今存在する混乱を解決して効率的・効果的な発展を図ることで、エンドユーザーの利便性を向上させることができる。ひとつの企業が特定の製品を押しつけるのとは話が違う。

Webの世界はわりと標準化が進んでいるほうだと思う。W3Cのリーダーシップはもちろん、IT企業のキャッチアップ、技術のメインストリームの移行スピードなどが理由としてあげられるだろう。

他方、標準的な技術が現状にマッチしていないケースもある。たとえばW3Cが 1999年5月に公表した「Webコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン 1.0」は、約6年の年月を経た今では陳腐化している部分が少なくないように感じる。現在2.0が策定中だが、長らく草案(Working Draft)の段階で足踏みしたままである。

Web標準信奉者をゼラット(zealot)と表現することがあるが、FirefoxやOperaなどの先進的なブラウザがそれなりに満足できるレベルでWeb標準をサポートしており、各ブラウザが将来的にもWeb標準に収斂していくことが期待されることからも、Web標準を無批判に受け入れるのではなく、真摯な批評の対象として捉える必要があるのは確かである。

Posted on 2005-01-24T21:33+09:00 | Category: Webトレンド

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