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「文体の確立」という難題

ここのところ「文体の確立」について考えている。『伝わるWeb文章デザイン100の鉄則』では、文体について次のように書いた。

このように、好きな言葉と嫌いな言葉をはっきりさせることが、自分の「文体」を確立するのに不可欠だ。

言葉に対する感受性を高め、自分の「文体」を確立するためにも、文章を書くときはひとつひとつの言葉にこだわってみよう。「言葉にこだわる」とは、「なぜその文脈でその言葉を使うのか」を常に意識しながら書く、ということにほかならない。(p.184)

つまり、文体というのは、自分のターミノロジー(用語法)を構築すること、よりわかりやすく言えば、その人独自の「辞書」を作ることと言ってよい。

この発想は、昔読んだある本に「本を読むのは、言葉をたくさん覚えるためではない。嫌いな言葉を排除するために読むのだ」という趣旨が書いてあったのがヒントになっている。ややニヒルだが、至言だと思う。

「文体の確立」は本来、作家がひとつの到達点として目指すべき大きなテーマである。ほぼすなわち「世界観の確立」だからであり、独自の世界観はその作家の「引力」となる。

たとえばビートたけし氏は、どの本でも一人称を「オイラ」と書く(そもそも、本を含むタレントとしての活動では「ビートたけし」、映画など芸術活動では「北野武」と名前を使いわけている)。日本語では一人称の使い方はとても重要で、「俺」を「僕」、「お前」を「キミ」にするだけで、随分とスマートな文章になる。逆にすれば、随分とワイルドな文章になる。

ところで、普段本を読んでいて、どうも「です・ます調」だとその人の文体が明確に見えてこないように思う。もちろんこれは相対的な感覚であって、「だ・である調」よりも「です・ます調」のほうが、より弱く(去勢されたように)感じるということ。

自分なりの文体を確立したいという人は、なるべく「だ・である調」で文章を書くことをお勧めしたい。その人のパーソナリティにもよるが、「です・ます調」は肝心なところで逃げ手が打ちやすいからだ。長い目でみると、これは結構大きな力の差になると思う。

私も大きなことは言えないが、自身の文体の確立のために、嫌いな言葉の排除に加えて、送り仮名や同義語のチョイスに気を配っている。だが、チョイスは時として大きくぶれ、自分自身をも混乱させるから厄介だ。

* * *

全く関係のない話。フジテレビ系の月9で「ラスト クリスマス」というドラマがやっているらしい。「らしい」というのは、私は自宅のテレビが壊れてしまって、ここ3ヵ月、全くテレビを見ていないからだ。

名作「東京ラブストーリー」のスタッフが再結集して送るということで、でも設定やストーリー展開に「そんなわけないだろ」というツッコミが散見されるのだが、何にも増して「なぜ織田裕二が主題歌を、しかもワムの『Last Christmas』のカバーを唄うのか」という疑問が随所で見受けられて、実に香ばしい。

「唄いたいから唄うのだ」というシンプルな解答こそが最適解なのだが、織田裕二の唄に対するスタンスについて2点ほど。

まず、「上手いヘタは問うな」ということ。反町隆史(言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、ポイズン)ほどのエッジ(自己愛)は利いていないが、わりと真摯に唄に取り組んでいる点は評価しようじゃないか。

だって、半年前ぐらいのTV番組のインタビューで、自分のエネルギーの配分を「役者1/3、唄1/3、プライベート1/3」と答えていたんだもの。プライベートは知らないが、役者と唄に同じエネルギーを配分している(と自分で信じている)時点で、世間の評価とのギャップを認識できない唯我独尊さが、イッツ・ゴーイング・マイ・ウェイで気持ちいいではないか。

次に、「わりといい曲もあったんだよ」ということ。フジテレビ系ドラマ「お金がない!」の主題歌『OVER THE TROUBLE』、明治製菓「ガトーマロン」CMソング『Happy Birthday』なんて、今でもたまに口ずさむほどの佳作だ。私は自分のなかで、これらの曲を「業」(ごう)と位置づけてはいるが。

本人の勘違いをきっかけにして、人々(圧倒的にマイノリティだとしても)の記憶に深々と刻み込まれる歌を唄う織田裕二に、心から賛辞を送ろうではないか。私は反町にも藤木直人にも佳作は全く期待できないが、織田裕二には5%ぐらいの確率で期待しているのだ。

Posted on 2004-12-06T23:56+09:00 | Category: Webライティング

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